S-VHS VTRの修理(日立 7B-SV500)
日立製作所 7B-SV500 S-VHSビデオデッキを修理しました。
学生時代にバイト代で購入し、20年以上経ってしまいましたが過去のテープが残っているのでまだ捨てるわけにはいかないのです。今回の故障は部品の経年劣化が原因で、交換部品は今でも簡単に入手できるので、日立の同型機・兄弟機をお持ちの方は修理の参考になると思います。
本記事はある程度の知識・技能をお持ちの方を対象とします。
この機種の発売当時のプレスリリースが残っていました。
1998年8月21日発売だったそうです。
「テープナビ」の使い勝手を向上させたVTR 4機種を新発売
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/9807/0723a.html
兄弟機は7B-BS700(BS内蔵S-VHS)、7B-BF300(BS内蔵VHS)、7B-FV200(BS無しVHS)の3機種です。もしかしたら1990年代後半の日立製VHSデッキは同じような設計かもしれません。
現象
- テープを挿入できない
- テープを挿入しようとしても反応がなく、アラームなども発生しない
- 電源投入は可能、チューナーなども動作する
- イジェクトボタンを押すとテープ挿入口はイジェクト動作する
原因調査
原因調査のために分解します。
筐体を開けたあと、メカデッキを丸ごと持ち上げて取り外します。序文にも記載しましたが、ある程度の知識がある方を対象としますので分解方法の詳細は省きます。
分解時の注意ポイントとして、フレキケーブルの外し忘れ、ドラム(ヘッド)への接触、モードスイッチの位相ずれ、マイクロスイッチの爪折れ、電源ユニットのコネクタ外し忘れなどに注意してください。
現象からみてテープ検出用のマイクロスイッチ不良が疑われるので、基板上のマイクロスイッチを確認してみました。
S9901のマイクロスイッチがテープ検出用のスイッチです。よく観察するとツメが見えません。写真手前に写っているS9902と見比べるとよくわかります。(実装方向が180度回転しています)
どうやら、経年劣化により、ツメが押し込まれたまま戻らなくなっているようです。
テープを入れるとき、テープをデッキ内に手で押し込むことでテープ挿入口の部品が動き、このS9901を動作させます。S9901が動作すると「テープが来た」と認識して、モーターを動作させてテープを引き込みます。今回はS9901が固着しているのでテープが来たことを認識できていませんでした。
交換部品
発売から20年が経ち、日立の純正部品は期待できないので同型のマイクロスイッチを探してみます。
なんとなくALPSのような気がしてカタログを見ていたら、すぐに見つかりました。
同型のスイッチはアルプスアルパイン製 SPPB610400 です。
私はチップワンストップで購入しました。
修理
基板から不良になったスイッチを取り外して観察してみます。
ツメをピンセットで引っ張ったりしてみましたが出てきません。ホコリの侵入か、スプリングの劣化でしょうか。
交換して修理完了です。
今回の作業中に、テープ挿入部(カセットコンパートメント)の樹脂部品のツメが劣化していて、折れてしまいました。スプリングを引っ掛けるためのツメだったので、ゼムクリップを切って即席の金具を作り、近くのポストに引っ掛けておきました。
動作確認
原因が単純だったので調整箇所もなく、動作確認も問題ありませんでした。
VTRは多数のセンサー・スイッチでメカの状況を検出しながら動いています。動作の様子を動画で撮ってみると、家庭用VTRは部品を1つでも少なくするように工夫を重ねられているのがよくわかります。ビデオテープが使われなくなり、現代では失われた技術とも言えます。